島根県の西部地方にある浜田市は日本海に面しており、山陰地方の中でも有数の水産都市として知られています。

島根県の西部沖は暖かな対馬海流と島根冷水域の冷たい海水が混ざり合い、魚のエサとなるプランクトンが数多く生息する豊かな漁場を生み出しています。

春にはアナゴ・スルメイカ・ノドグロ・マアジ・マサバ・マフグなどが獲れますし、夏にはアマダイ・アワビ・サザエなどが水揚げされています。

秋にはカレイ・ケンサキイカ・サワラ・ダルマ(メダイ)、冬にはアンコウ、タチウオ、ニギス、ブリなど浜田市の漁港では一年を通して色々な種類の魚介類が水揚げされています。

 

一定の基準をクリアした魚のみが名乗ることができる浜田市の水産ブランド「どんちっち三魚」

そんな浜田市の漁港で水揚げされる魚の中に「どんちっち」というブランドの三魚があります。

「どんちっち三魚」は、一定の基準をクリアした魚のみが名乗ることができる浜田市の水産ブランドです。

浜田市水産物ブランド化戦略会議が、地元で獲れるアジ、ノドグロ、カレイの三種類の魚を「どんちっち三魚」としてブランド化しました。

浜田市水産ブランド化戦略会議は、漁業生産団体や漁協、消費者団体、仲買団体、加工団体、試験研究機関などが手を組んで立ち上げられたものです。

海に囲まれた日本では魚は貴重な栄養源として昔から食べられてきましたが、現在では食が多様化したり水産資源の減少によって漁獲高が伸び悩むなど水産業は様々な課題を抱えています。

浜田市水産物ブランド化戦略会議では、そういった水産業の苦境を打破しようと水産業の活性化や魚の価格向上を目的として地元で獲れる三魚のブランド化を図ってきました。

どんちっち三魚に共通する規格について

「どんちっち三魚」には、「どんちっちアジ」「どんちっちノドグロ」「どんちっちカレイ」があります。

三魚に共通している規格としては、浜田市水産物ブランド化戦略会議に加盟している団体が浜田漁港で水揚げされたものであることが挙げられます。

それに加えて、生産者が選別して漁業協同組合JFしまね浜田支所が証明したものという規格もあります。この規格をクリアしていないと、「どんちっち」ブランドを名乗ることはできません。

また、アジ・ノドグロ・カレイの種類別にも独自の規格が設けられていますのでそれぞれご説明していきます。

どんちっちアジの規格について

まず、「どんちっちアジ」は島根県の西部沖で巻き網漁業で漁獲し、浜田漁港で水揚げされたものと定められています。旬の時期である4月から9月に獲れたものだけが「どんちっちアジ」として認定されることになります。

「どんちっちアジ」は脂がのっているのが特徴ですが、脂質は酸化しやすいため徹底した鮮度管理を行うことも求められます。高鮮度のものしか「どんちっちアジ」を名乗ることはできません。平均脂質が10%以上あり、サイズが50g以上のものと定められており、熟練した選別人によって選別されています。

「どんちっちアジ」は一般的なアジに比べて脂がのっているので美味しいと言われています。島根県の西部沖にはカラヌスという脂質が非常に多いプランクトンが生息しているため、これを餌とするマアジも脂質を多く含むと考えられているからです。

どんちっちノドグロの規格について

「どんちっちノドグロ」も非常に脂ののりが良い魚です。ノドグロは関東ではアカムツと呼ばれる魚で、高級魚としても知られています。元々ノドグロは脂質の多い魚ですが、島根県の沖合で獲れるノドグロはそれよりも脂質の量が多いことが分かっています。

これは島根県沖合に脂質の多い甲殻類やプランクトンなどが多数生息していて、それを栄養源としているからです。「どんちっちノドグロ」は、沖合底引き網漁業によって山陰沖西部で漁獲したものに限られます。

旬の時期に限定されており、8月中旬から5月頃までに水揚げされたものです。脂質が豊富で魚のサイズは80g以上という規格があります。ノドグロは傷みやすい魚なので、高鮮度であることも重要なポイントになります。

 

どんちっちカレイの規格について

「どんちっちカレイ」は、沖合い底引き網漁業によって山陰沖西部で漁獲したものに限られています。8月中旬から2月末までに水揚げされたカレイのみが「どんちっちカレイ」として認定されます。

魚のサイズは50g以上と規定されています。カレイの旨味成分であるイノシン酸は時間が経過するにつれて失われていくので、徹底した鮮度管理も行われています。

カレイは浜田市を代表する魚の1つで、淡白な中に品の良い旨味が感じられるのが特徴です。特にカレイの塩干品は浜田市の特産品として知られており、生産量も全国一位となっています。旨味と甘味、脂質が絶妙なバランスを生み出しています。

浜田市の水産ブランド「どんちっち」の由来とまとめ

浜田市の水産ブランド「どんちっち」の由来となったのは、この地域に伝わる伝統芸能石見神楽からきています。「どんちっち」は神楽の囃子を表現する幼児言葉でしたが、石見神楽全体を表現する言葉になりました。

海や山といった美しい自然に囲まれた浜田市は、歴史や文化も根付く美しい街です。「どんちっち」はこの地域に相応しいブランド名といえるでしょう。